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2017年12月28日

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「獅子よ集まれ!東北宮城へ」レポート

獅子よ集まれ

  東北に獅子が集う。

※本プロジェクトは、内閣官房オリンピック・パラリンピック推進本部事務局の委託により、平成29年度オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査として実施した。

 

全郷芸は、日本貿易振興機構(ジェトロ)の「オリンピック・パラリンピック基本方針推進調査」に係る試行プロジェクトを受託し、「獅子よ集まれ!東北宮城へ」を宮城県仙台市で主催した。この催しは、岩手・宮城・福島の3県の東日本大震災被災地に伝承されている郷土芸能「獅子舞」の鑑賞・体験を通して、日本の伝統文化の魅力と意義を発信し、東京オリパラ開催の意義と機運を醸成するものとして開催された。また、被災地であり、交流や発信の中心地である仙台市に、被災各地の「獅子舞」が集い、広く一般の人に披露することで、被災地の現状と復興の姿を世界へ発信することを目的として実施した。

1111日(土)、岩手・宮城・福島3県から獅子舞7団体が集い披露する「獅子よ集まれ!東北宮城へ」を、宮城県仙台市のせんだい農業園芸センターみどりの杜の屋外仮設舞台で行った。津波被災地でもある当センター、海からの風が時折強く吹く中、次々とバラエティあふれる獅子舞が登場、地元劇団出身の金野むつ江さんによる訛り交じりの軽妙な司会で和やかに進行した。


全団体が様々な獅子頭や色とりどりの衣装で勢ぞろいしたオープニングを皮切りに、地元仙台市の「福岡の鹿踊・剣舞」による岩手・宮城に広く伝わる鹿踊のルーツともされる鹿踊、セットで演じられる鬼のような面をかぶる剣舞で始まった。福島県浪江町の「請戸の神楽」は大きな赤色の獅子頭をかぶって刀などを手にして舞われる。浪江町は原発事故によって演者は今もバラバラで暮らしているが、出演にあわせて久し振りに集合したとのこと。次は岩手県大船渡市から「迎山流永浜鹿踊り」が登場し、背中に背負った3mほどの竹竿(ササラ)を振り回しながら所狭しと激しく踊られ、観客を虜にした。この鹿踊りも津波で道具一式全て流されたが復活した団体である。続いて福島県いわき市の「小名浜岡小名のささら」。三匹獅子舞と棒術・剣術で構成されており、これまで一度もいわき市の外に出たことがないという、貴重な演技であった。宮城県石巻市からは「渡波獅子風流」による獅子舞と太鼓の披露、宮城県沿岸部の正月に欠かせない獅子舞習俗が再現され、かつ獅子風流“塾”と名付けた団体らしく子ども達の演技・演奏は一見の価値がある。次は岩手県大槌町からの「大槌城山虎舞」が、会場いっぱいで荒々しく舞われた。沿岸のお祭りはとかく若者が多い。城山虎舞もご多分に漏れずで、この若者達の勢いと繋がりが震災からの復興に大きな役割を果たしたのだろう。最後は宮城県女川町の竹浦獅子振り保存会による「女川の獅子振り」。津波で壊滅した竹浦地区から秋田県へ集団避難していた時、どうしても獅子振り(獅子舞)をしたいと避難所にある座布団やスリッパで即席の獅子頭を作って披露したことで復活。当日もその座布団獅子が登場し、震災からの復興を印象づけた。


全体を通して、総じて若者の演者が多く、東京オリパラ大会への日本の地方文化からの盛り上げに繋がるイベントとなった。また、センター名の通り、仙台平野の農業の中心地であり、当日は仙台市中の農作物が集まる地産地消イベント「収穫まつり」が同時開催され、大変なにぎわいで、センター発表によれば入場者は5,860人を記録し、多くの方に獅子舞をご覧いただけた。

12日(日)は、震災の記憶を伝える施設であるせんだい3.11メモリアル交流館で、「災害と芸能の国際フォーラム」を開催した。八巻寿文館長の進行のもと、パネラーに、震災後の被災芸能の把握や支援に奔走した小谷竜介氏(東北歴史博物館学芸員)、林勲男氏(国立民族学博物館教授)、阿部武司氏(東北文化財映像研究所所長)、被災芸能関係者である東梅英夫氏(岩手・臼澤鹿子踊保存会会長)、平塚英一氏(宮城・女川獅子振り復興協議会事務局)、佐々木繁子氏(福島・請戸芸能保存会副会長)を迎え、芸能が復興に果たした役割などをディスカッションした。

その後、仙台市沿岸部にある震災遺構荒浜小学校を見学し、また、石巻市の渡波地区を訪れ、前日に引き続き「渡波獅子風流塾」から震災時の状況などを伺った。さらに同塾の協力を得て、「獅子舞体験ワークショップ」を渡波公民館で実施、今回2日間を通して、オリパラ開催の意義と機運醸成、発信の効果測定のために依頼した、宮城県内の外国人モニターら15名ほどで、獅子舞の舞や太鼓を体験するプログラムを行った。外国人モニターは、欧米・アジアを取り混ぜた多国籍・多言語の方々であったが、日頃出会うことのない郷土芸能の多様さや貴重さに、関心を寄せていた。
 

当日の様子は、NHK「くらし☆解説」(1115日放送)や各種新聞などで取上げられた。また本事業の様子は、全郷芸公式Facebookや動画サイトYoutubeでみることができる。 https://youtu.be/n2AyVFt8QWI